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薬用植物の責任ある持続可能な取引への理解を深める

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日本企業がインドを訪問
薬用植物の責任ある持続可能な取引への理解を深める

2012年02月15日
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120215India1.jpg 日本企業の代表者数名がインドで実施されている
持続可能な野生植物採取の現場を訪れた。
©トラフィックイーストアジアジャパン

【インド、カルナータカ、2010年2月9日】
薬用・アロマティック植物の持続可能で責任ある取引を推進する活動の一環として、薬用植物を扱っている日本の主要な企業の代表数名がインドを訪問した。

 日本の輸入をみると、インドは薬用・アロマティック植物の供給量が2番目に大きい国で、それら植物は野生から採取されているものも多い。同時に、インドでは1,000種近くの薬用植物が自然保護的観点から危機に瀕しており、野生の薬用植物の過剰採取が大きな問題となっている。

 持続可能でない採集は、急激な取引需要の増加と相まって、個体群や地域個体群を枯渇させ、最終的には種を絶滅させてしまうかもしれない。

 企業などの民間セクターは、流通過程においてもっとも重要で影響力のある利害関係者のひとつであると考えられる。関連業界の企業と協力することは、薬用植物の野生からの持続可能な採取を推進するための重要な一歩である。

 
120215India2.jpg ©トラフィックイーストアジアジャパン

 トラフィックインドのコーディネーターであるMKSパシャは言う。「この訪問は、薬用植物産業界に積極的な行動の変化を起こさせるというトラフィックの目的達成に向けた極めて重要な一歩である。ここでいう薬用植物産業界とは、野生から採取される薬用・アロマティック植物から製造される化粧品、薬品、食品を取り扱う企業などを指す。また、持続可能な方法を推進することは、産業界への長期にわたる確実な供給を可能にする。」

 この日本とインド間の経験や知識の交換は、トラフィックがアーユルヴェーダ・統合医学研究所*のサポートの下、計画し実施された。トラフィックイーストアジアジャパンが日本側からの先導を担い、伝統的な香料や医薬品を取り扱う主な日本企業の代表者がこの企画に参加した。このプロジェクトは経団連自然保護基金のご支援により実施している。

 参加者は、カルナータカの薬用植物保全地区(MPCA)の現地調査サイトを訪れ、薬用・アロマティック植物の持続可能な採取の際、現地で実行されている手法について学び、地域コミュニティや取引業者、主要企業と会って話をした。

 
120215India3.jpg ©トラフィックイーストアジアジャパン

 DKヴェド氏(I-AIMのアドバイザー)、パドマ・ベンカート博士(I-AIMのディレクター)、Kハリダサン博士(I-AIMの共同ディレクター)、ジャガナート・ラオ氏(I-AIMの科学者)らI-AIM/FRLHTの専門家チームが薬用植物の現状や取引が保全に与える影響について説明役を務めた。

 また参加者は、インドの主要な植物製薬企業であるナチュラル・レメディーズ社(Natural Remedies Pvt. Ltd.:本社はバンガロール)を訪れた。この会社は、標準化された植物抽出物や植物化学物質、植物を使った動物用の健康管理製品の製造・供給をおこなっている。ナチュラル・レメディーズ社の担当者が、薬用植物の調達や、保全のための持続可能な取引推進を支援するための好事例を紹介した。

 薬用・アロマティック植物をもっとも多く輸出しているのは中国である。しかしインドは、特にビャクダンSantalum album などのアロマティック植物の取引において、欠くことのできない役割を果たしており、チャCamellia sinensis やセイロンニッケイ(シナモン)Cinnamomum zeylanicum といった食用となる様々な植物やスパイスを供給している。その他インドで野生から採取される植物の取引でみられるものとして、オオバナサルスベリLagerstroemia speciosa、ハンゴンジュ(インドニュウコウ)Boswellia serrata、サラシア・レティキュラータSalacia reticulata、ツボクサCentella asiatica がある。

 日本の製造業や最終消費者にとっての薬用・アロマティック植物の価値や重要性については、2010年にトラフィックがレポート『私たちの暮らしを支える生物多様性』の中で紹介し、関心を集めた。野生の薬用・アロマティック植物を保全する必要があることは、同じく2010年に名古屋で開催された生物多様性条約の第10回締約国会議の議題の焦点にもなった。この生物多様性条約の次回の締約国会議は、今年10月にインドのハイデラバードで開催される。


注:
野生生物取引の監視ネットワークであるトラフィックは、WWF(世界自然保護基金)およびIUCN(国際自然保護連合)の共同事業である。トラフィックは25ヵ国以上で野生生物取引問題に関する調査や関連する活動に取り組んでいる。インドでは、トラフィックはWWFインドの一部門として活動している。トラフィックインドは野生動植物の取引がインドの自然保護を脅かすことのないよう活動を続けている。詳細についてはこちらwww.trafficindia.org または www.traffic.org

*アーユルヴェーダ・統合医学研究所(I-AIM:The Institute of Ayurveda and Integrative Medicine)は、インドの医学的な遺産を守り、さらにそれを積み重ねていくために設立されたNGOである。FRLHTは、インドの民族医学的な遺産を守るための取り組みの一環として、保全活動の他に薬用植物の持続可能な利用に関する取り組みを始めた。この研究所は、FRLHT(地域伝統医療復興財団)として知られていたが、現在はI-AIMとして活動している。

薬用植物やフェアワイルドに関して詳しくはこちら

詳細に関してのお問い合わせはこちら
MKS Pasha、Coordinator、Research and Training、トラフィックインド
Email : kpasha@wwfindia.net Phone : (011)41504786 and +919810797349
金成かほる、シニアプログラムオフィサー、トラフィックイーストアジアジャパン
Email:kanari@trafficj.org Phone : (+81) 3 3769 1716.

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